「極北に駆ける」(植村直己著、山と渓谷社)
著者は有名な冒険家で、日本人では初めてエベレストの頂上に立った人らしいのだが、私はこれまで全くこの人のことを知らなかった。
世界五大陸最高峰の登頂を遂げた氏が、次に南極大陸単独横断の夢を果たすべく、その前準備として極北のエスキモーの部落で暮らした1年強の記録がこの本には記してある。
単独でエスキモーの部落に入り、エスキモーと同じものを食べ、同じように生活をしながら信頼関係を築き、犬橇で3000Kmの単独横断を果たすまでの記録が記されており、どれも自分に置き換えると到底想像しがたい壮絶なものであった。極寒の地では気温が摂氏40℃を下回ることも珍しくなく、その中でアザラシや鯨の脂ぎった臭いの強い乾燥肉を、その強烈な臭いにもどしそうになりながら飲み込む場面や、猛烈な吹雪の中を10時間も犬橇で走る場面など、どれもこの類の環境としては特Aクラスの劣悪な環境であり、同じ事をやれる日本人は皆無に近いのではないだろうか。
私がこの本で一番印象的だったのは、本文後の解説者のコメントに記されていた、毎日新聞社発刊の植村氏の著書から引用した以下の一文である。
「この最後の旅が終わった後、オレは日本でどのような生活の道を選ぶか。これこそわが生涯を決める大きな年だ。今のオレにこれといって自分には自信を持って働ける能力はなく、日本帰国を前にした今、自分の進路に堅固な意志さえ持っていない。(中略)単独登山が冒険であろうと、それはわが人生の一つの遊びに過ぎないのだ。どんな仕事であれ、自分に定職をもつことこそ、真の人間として生きる価値があるように思われる。自分のやっている、何か分からない放浪の生活と登山は、自分の職業ではない。オレの山行は主義があって登っているのではなく、心の勇んだときに登るだけと思われる」
これだけ強靭な精神力と輝かしい経歴を持ちながらも、将来に不安を感じ、そして輝かしい冒険の経歴をも真の自分の生き方ではないと言う氏の言葉はとても重かった。
そしてこの言葉に引っかかったのにはもう一つ理由がある。自分がモルディブへ来てから強く感じるようななったことと共通性があり、共感をしたからである。出発前には世界に出れば新たな価値観に出会えると信じていた自分が実際に日本を出てわかってきたことは、未知の方程式には出会えても、0はどんな数字をかけても0であるということや、1、2、3、5、7、11・・・は素数であるとった真理はどこへ行っても変わらないということだ。
世界の何処にいようとも一つの場所で信念を持って誠実に働き続けるということに大きな意味があり、一番大切なことなのだということがわかった。
世界を見ることはとても意義のあることだと思う。しかしそれは単に自分の引き出しを増やすことに過ぎず、何かを成したわけではない。その観点で国際協力という活動を見ると、多くの問題点も見えてくるように思う。協力隊の活動は原則2年と決められている。2年は決して短い時間ではない。実際異国の地で2年間現地人と同じ生活をするということは想像以上に厳しいことである。しかし、たかが2年でもある。確かに2年間現地で生活をすればある程度の現地人の習慣や価値観も見えてくるし、それなりの人間関係も築けるかもしれない。しかし2年で彼らのことを本当に理解できるはずはなく、もし理解できたという人がいるとするのなら、それはとんでもない思い上がりだと思う。
本当に国際協力に自分の身を置こうとするなら、よっぽどの覚悟が必要になるだろう。一生その地に身を置き、生涯をそこに捧げる覚悟である。実際にそのような日本人の名を何人か聞いたことがあるが、その人たちこそ、国際協力の名を語るべき人たちである。生半可に国際協力関連の機関に身を置き、ちょこっと海外で生活をして中途半端に語学が出来る程度で国際協力を語る人は身の程知らずだと思う(実際にはそんな人だらけなのだが)。格言う私にももちろんその資格はない。
協力隊の同期にNGO活動を一度切り上げ、JICAに参加した仲間がいる。彼はこの活動が終了後再びNGOを自ら立ち上げてケニアに戻ると言う。NGOの活動というのは多岐におよぶ為、一概には言えないが、その多くがお金の工面に迫られ、JICAでは踏み込めない危険地域に身を置き、いつ何時命の危険に襲われるかわからない状態の中、現地の人たちのために働いている。彼もそんな危険な状況の中働いていたが、そこに自分の使命を感じ、2年後再びそこへ戻ると言う。日本を発つ前に、彼にそのNGOに参加しないかと誘われた。しかし私はその誘いを断った。中途半端に出来ることではないし、そこが自分の働く場所ではないと感じたからだ。でも私は彼を精一杯応援したいと思っている。彼は国際協力を語る権利のある数少ない日本人の一人だから。その覚悟で現地に入り、自分をわきまえ、そしてそこで誠実に働こうとする彼は大きな尊敬に値する。
私は私の出来る国際協力を日本ですることにする。幸いにも協力隊に参加したおかげで次の目標が明確になってきた。新たな夢が3つも生まれた。そして残りの1年半、誠実に働けたらと思う。
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絶対実現させるつもりです。
大ちゃんに負けないようがんばるわ。
お互い切磋琢磨して夢を実現させよう!
まぁ、自分自身に納得できる生き方をしようぜ。さて、俺は・・・。
全ては自分の心の中。
いつも自分との戦いなのです。